ことばブリッジ ことばブリッジ

コンセプト

「ことばブリッジ」の考え方

「ことばブリッジ」の指導は、講師の経験や勘だけに頼ったものではなく、第二言語教育の研究の積み重ねを土台にしています。ここでは、その考え方を2つに分けてご紹介します。ひとつは、レッスンの組み立て方そのものの土台になっている考え方(BICS/CALP)。もうひとつは、「なぜ日本語に時間をかける価値があるのか」を説明する考え方(CUP)です。

1.会話の力と、学びの力は別もの

誰が言い始めたのか

この考え方を1979年に整理したのは、ジム・カミンズという研究者です。カミンズ自身、アイルランドで生まれ育ち、当時の学校でアイルランド語(少数言語)を教える試みに触れて育ちました。その後カナダに渡り、英語で日常会話ができるようになったバイリンガルの子どもたちが、学業面の言語力を正しく評価されないまま、不利な扱いを受けている現状を目の当たりにします。

「日常会話ができること」と「教科の勉強についていけること」は、まったく別の力である——この気づきから生まれたのが、英語でBICS(Basic Interpersonal Communicative Skills:基礎的対人伝達能力)、CALP(Cognitive Academic Language Proficiency:認知学習言語能力)と呼ばれる、2つの言葉です。

「ことばブリッジ」では、より分かりやすいように、この2つを「くらしことば」「まなびことば」と呼びかえてご説明しています。

くらしことばと、まなびことば

この差の大きさこそ、「日常会話は問題ないのに、学習面の日本語だけが心配」という、海外で子育てをするご家庭の実感の理由です。

場面によって、必要な力は変わる

カミンズは1981年、この2つの言葉をさらに整理し、「その場に手がかりがあるかどうか」と「頭をどれくらい使うか」という、2つのものさしで場面を見るようにしました。単に「話せる/話せない」で分けるのではなく、場面ごとの負担の違いとして捉え直す、という考え方です。

文脈支援あり
文脈手がかりが少ない
負担が
大きい
B:中間ゾーン
実験・図解つき説明
D:CALPの典型
教科書の読解・作文
負担が
小さい
A:BICSの典型
会話・遊びの場面
C:中間ゾーン
電話・業務連絡
図1 文脈の手がかりと、考える負担の2つのものさし

左下(ゾーンA)が、いわゆるBICS:友だちとの会話のように、手がかりも多く、負担も軽い場面です。右上(ゾーンD)が、いわゆるCALP:教科書を読んで作文を書くような、手がかりが少なく、負担も重い場面です。「ことばブリッジ」のレッスンは、この左下から右上への道のりを、無理なく橋渡しできるように組み立てています。

3つのメソッドは、この図のどこにあたるか

「ことばブリッジ」の3つのメソッドは、図1の上で、次のように位置づけられます。

メソッド レッスンでしていること 図1でいう位置 狙い
①きき書きブリッジ 講師が読み上げた文章を聞いて書き取る ゾーンBに近い(講師の声という支えがある) お手本の書き方に触れられるようにする
②いいかえブリッジ 日常の話し方を、まなびことばに近い言い方に直す練習をする ゾーンBとDの間 まなびことばへの言いかえを、口頭でリハーサルできるようにする
③じぶんのことばブリッジ 同じ話題について、自分の言葉で文章を書く ゾーンDに近い(支えなしで書く) ひとりで書けるようにする

2.2つの言語は、水面の下でつながっている

氷山にたとえると

日本語と現地の言語は、会話の流暢さや発音といった、目に見える部分では別々に育っていきます。ですが、頭の中の「考える力」という部分では、実はひとつの土台でつながっている——これが、カミンズのもうひとつの重要な考え方、CUP(Common Underlying Proficiency:共有基底言語能力)です。よく、氷山にたとえて説明されます。

見える部分:発音・語彙・流暢さ 日本語 現地の言語 認知・学力面の言語力 (共有基底言語能力/CUP)
図2 2つの言語は、水面の下でつながっている

水面より上では、日本語と現地の言語は別々の山として見えています。しかし水面の下では、この2つがひとつの土台でつながっています。ものごとを筋道立てて考えたり、概念を理解したりする力は、言語を問わず共通していて、一方の言語で育てた力は、もう一方の言語での学びにも生かされます。

だからこそ、日本語に時間をかける価値がある

海外で暮らすお子さんたちの多くは、現地校でほとんどの教科を現地の言語で学んでいます。「ことばブリッジ」が育てようとしている日本語は、その現地での学びと競い合うためのものではありません。

海外で複数の言語に触れながら育つ子どもたちについての研究では、家庭で使う言語の読み書きの力を育てることが、今学んでいる現地の言語での学びの土台にもなる、ということが指摘されています。

「ことばブリッジ」で日本語の「まなびことば」を育てることは、現地での学びと張り合うものではありません。水面の下にある共通の土台を強くすることで、今の現地校での学びを妨げることなく、この先どちらの言語でも学び続けられる力を、お子さんの中に残しておくことができます。

「現地校がすべて現地の言語なのだから、日本語に時間を使うのは遠回りではないか」——そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですがこの考え方に立てば、日本語に時間をかけることは、今の学びの妨げにはならず、この先どちらの環境でも学び続けられるための備えになる、とお伝えできます。

3.帰国に備えて

「ことばブリッジ」で育てている「まなびことば」の力は、いずれ日本に帰国したときに、そのまま生きる力でもあります。レッスンの記録は、その帰国のタイミングに向けて、2段階でお届けしています。

帰国に備えて①

学習到達度マップ

2か月に1回、いまの到達状況をまとめてお届けします。学期の節目には、より詳しい総括版もご用意します。

帰国に備えて②

学習ポートフォリオ

帰国が決まったタイミングから準備を始め、編入先の学校にそのままお渡しできる引き継ぎ資料として仕上げます。

まとめ