「ことばブリッジ」が、国語の中で大切にしていること
帰国したお子さんが、日本語での日常会話には特に困らないのに、なぜか教室の中でどこか浮いてしまう——そんな話を耳にすることがあります。友達の会話にはついていけるのに、社会科の話題になるとまったくついていけない。電車の中や来客時のふるまいが、周りの子と少し違う。これは、言葉の力そのものというより、日本で育つ子どもたちが日々の生活の中で自然に吸収している「知識」と「ふるまい方」に、触れる機会が少なかったことが背景にあることが多いようです。
算数は積み上げ型の教科なので、遅れがあれば気づきやすく、対策も立てやすい分野です。一方、社会科の知識——都道府県の位置や、季節の行事、世の中で話題になっていること——は、学校の授業だけでなく、テレビ、家族との会話、近所づきあいといった生活全体を通じて、いわば空気のように蓄積されていくものです。海外で暮らしていると、この「空気」に触れる機会そのものが少なくなるため、本人も気づかないうちに、知識の量に差が生まれてしまいます。
さらに、「社会のルール」と呼べるようなふるまい方——電車内でのマナー、順番を待つ感覚、目上の人への言葉づかいや距離の取り方——も、誰かが教科として教えてくれるものではなく、日常生活の中でくり返し見聞きすることで身についていくものです。これも知識としての社会科と同じく、教えるというより「浴びる」ことで育つ力であり、海外にいるとその機会がどうしても少なくなります。
「ことばブリッジ」は国語の力を育てることをまっすぐな軸にしています。聞く、言い換える、書くという言葉の技能を、1対1でじっくり積み重ねる——この密度こそが、私たちが一番大切にしていることです。
そのうえで私たちが工夫しているのは、その言葉の練習に、何を題材として選ぶかという部分です。日本の行事や暮らしの場面、世の中の出来事といった題材を意識的に取り入れることで、国語の力を育てながら、同時に日本での生活感覚にも自然に触れられるようにしています。
聞き取りの練習や作文のお題には、日本の行事、都道府県、公共施設の使い方、防災といった、暮らしに根ざした話題を意識的に取り入れています。言葉の練習という形を通して、日本での生活のイメージそのものにも触れてもらえたらと考えています。
「電車の中では」「お店に入ったら」「初めて会う人には」といった、場面ごとのふるまい方や言葉づかいも、言い換えの練習の題材として取り入れています。正しい言い方を知ることは、その場にふさわしいふるまいを知ることにもつながっています。
月替わりのお題を用意し、季節の行事や身近なニュースについて、自分の言葉で話してみる時間も設けています。知識を教え込むというより、世の中の出来事に日本語で触れ、自分なりに語ってみる経験を積み重ねることを大切にしています。
定期的にお渡ししている学習到達度マップにも、その時期に取り上げた社会的な話題を一言添えるようにしています。国語の力だけでなく、日本での生活感覚がどんなふうに育ってきているかも、あわせて感じていただけたらと思います。
「ことばブリッジ」は、これからも国語の力を育てることを軸にしていきます。そのうえで、日本の暮らしや人との関わり方にも自然に触れられるよう、教材の中身にはこれからも工夫を重ねていきたいと考えています。